梅雨らしく、でもそれほど不快ではない湿度のなか、突然真夏のような暑さの日があるというように、季節の移ろいを感じる日々です。
そんなある日のこと、日本文化の発信を目的に設立された「クールジャパン機構」が、民間百貨店と共同出資してシンガポールに展開していた「ISETAN The Japan Store(以下、The Japan Store)」が撤退したというニュースを見ました。
このニュースを最初に知ったのは、文筆家 古谷経衡さんがニューズウィークに寄稿したこの記事です。
海外で見た酷すぎるクールジャパンの実態~マレーシア編~
クールジャパン機構は、安倍内閣の肝入り政策の官民ファンド。
アニメや音楽などのコンテンツ、伝統技術、ファッションなど、6種類のテーマに分かれ、政府の審査のもと案件を決定し、税金から投資するという仕組みで、現在27の案件が稼働中。
前述の「The Japan Store」についてはすでに削除されてしまったようですが、概要を説明すると、シンガポールの一等地のデパート4フロアを貸切り、日本のコンテンツ(マンガや書籍、キャラクターグッズ)などを展示販売するアンテナショップを2013年からスタートしていました。
驚いたのは、クールジャパン機構がこのプロジェクトについて2013年にリリースした以下の記述。
古谷さんはこの記事で、このプロジェクトに対して厳しく批判的です。
投資ですから、それが成功するしないはやむを得ない要因もあるとは思いますが、この内容で本当に投資を成功させようと思っていたとは思えないコンテンツのラインアップに、私も同じ感想を覚えました。
誰がこの品揃えを決めたのか、その成功確率について、関連各所はどのような審査をしたのか。
そして血税を10億円近くも「スッてしまった」責任はどこにあるのか。
悔しいのは、素晴らしい日本文化を広めるためのコンテンツを、果たしてどこまで真剣に考えたのかが分からないまま10億円ものお金が費やされてしまったということです。
どうにも消せない不完全燃焼感とともに、日本文化を輸出するうえでのコンテンツ選びのセンスが、ますます問われる時代になってきたと実感しています。